Le Meur氏はヨーロッパ最大のインターネット関連イベントとされる「Le Web」の創始者です。2012年のLe Webのテーマは「モノのインターネット(Internet of Things)」で、これは、あらゆる物体はウェブ対応にできるという構想です。COMPASS編集部では、すべてのものをウェブ対応にすると生活にどのような大変革が起こり得るか、Le Meur氏にお話を伺いました。
COMPASS: テクノロジーの魅力は何だと思われますか。
Loic Le Meur氏(以下LLM): 私は1985年に両親の最初のMacintoshを「奪って」以来、テクノロジーに魅せられてきました。私は子どもでしたが、プログラミングを学びたかったのです。テクノロジーは絶えず進化し、変化するため、それをいつも生活の中心に置いておきたかったわけです。テクノロジーには必ず「次」があります。たとえば、一部の人がコンピュータは退屈になってきたと思うと、その次にiPadが現れて、すべてを変えました。
「モノのインターネット」をどのように定義されますか。”?
LLM: 当初インターネットにアクセスできるのは、コンピュータだけでした。その後、情報処理機能を備えたモバイルデバイスが現れ、どこにでもインターネットを「持ち運べる」ようになりました。「モノのインターネット」はその進化形で、インターネットが身の回りにあるほとんどの物とつながることを意味しています。離れた場所から携帯電話で家や車のドアを開ける日も近いでしょう。携帯から家の照明をオンオフしたり、温度を調整したりすることになるのです。これらすべてが実現し始めており、生活のありかたを変えつつあります。
"「モノのインターネットが本当の意味で進歩するかどうか、という設問はもはや成り立ちません。モノのインターネットは既に存在していて、拡大中なのです。私達ががどう適応するかが、その真の力を引き出すことにつながります」"
Loic Le Meur氏
LE WEB 創始者
「モノのインターネット」は、私たちの生活にどのようなメリットをもたらすでしょうか。
LLM: 大きいのは健康面でのメリットです。Le Webでは、自分のことをより適切に分析できるようにセンサーで脳波を測定できる様子が紹介されました。健康状態を追跡するには、現在は血液サンプルやDNAサンプルが必要ですが、遠からず、体で起きるあらゆることを追跡する、常に身に付けられる小型のセンサーを利用できるようになるでしょう。
「モノのインターネット」があれば、楽しみもたくさん増やすことができます。たとえば、消費したカロリーが少ない日があるとします。フィットネスデバイスを使って、その日は余分なおやつを食べられないように冷蔵庫が開かないようにしたり、冷蔵庫を開けるたびにアラームのような音を出すようにしたりできます。
未来の交通や移動において、「モノのインターネット」はどのような役割を果たすとお考えですか。
LLM: 自律走行車は、普通の車を人が運転するより安全になるのは確実でしょう。航空機を見てください。機械はフライトプランに正確に従うという点ではパイロットよりずっと精度の高い仕事をするので、99%以上は自動操縦で飛んでいます。友人と夕食に出かけ、二、三杯程度のワインを飲んで、体内のアルコールレベルを気にすることなく安全に自分の車で家に帰れたら、素晴らしいかもしれませんね。
「モノのインターネット」が本当の意味で進歩したとき、どんな未来が待っていると思いますか。
LLM: 怖いと感じる人もいるかもしれませんが、私はとてもワクワクしています。ウェブも拡大し始めたころは恐ろしげに思えましたが、今ではそれがない生活は考えられません。「モノのインターネット」が本当の意味で進歩するかどうか、という設問はもはや成り立ちません。私はモノのインターネットは既に存在していて、拡大中だと考えています。私達ががどう適応するかが、その真の力を引き出すことにつながります。すごいことになりますよ。◆
- Loic Le Meur氏はThe Wall Street Journal紙では「ヨーロッパのTech25」の一人に、またBusiness Week誌で「ウェブで最も影響力のある25人」の一人に、それぞれ選ばれている。