Transportation & mobility

自律走行車 無人自動車で、より安全でストレスの少ない移動の実現へ

William J. Holstein
8 June 2014

T.E. “Ed”Schlesinger博士は、現在、米国メリーランド州のジョンズ ホプキンス大学の工学部長で、カーネギーメロン大学の職員時代にはGeneral Motors社と共同でCollaborative Research Laboratory on Autonomous Driving(自律走行共同研究所)を設立した無人自動車向けエンジニアリングシステムの専門家です。同氏は、今後15~20年以内に自律走行車の時代がやって来ると確信しています。

COMPASS: 自動車メーカーは、Google社、Apple社、あるいはMicrosoft社と提携し、自動車の自律走行を可能にするオペレーティング システムを開発しようとしています。なぜ今、こうした動きが見られるのでしょうか。

ED SCHLESINGER (ES): 車内システムおよび別車両との双方向通信を担うIT基盤が自動車の付加価値になりつつあります。これは他の何にも劣らず経済性の問題で、人々はいつの時代にもスタイルと快適性が大切だと思っています。しかし、今後はますます、安全性と接続性を保証するテクノロジーが重要になっていくでしょう。

COMPASS誌: 米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)が、つい先日、すべての車に現在地や速度などのデータを双方向通信する機能を搭載させたいと発表しましたが。

ES: それが先ほど触れたIT基盤の構築の始まりです。自律走行車が他の車と相互通信し、世界中で別のデバイスやシステムと通信している光景を想像するのは難しいことではありません。

COMPASS誌: では、自律走行は実際のところ、どのように展開していくのでしょうか。

ES: 何らかの標準化が必要になるでしょう。異なったメーカーが製造した車や装置が、確実に相互通信できないような状況を招くわけにはいきません。航空管制システムで目にするものと、それほど違うものにはならないでしょう。航 空 管 制 シ ス テ ム で は、Airbus機 とBoeing機のどちらもが、途切れることなく全て機能する手段でつながっていることが求められています。

COMPASS誌: 北米、ヨーロッパ、日本、韓国、中国のメーカーが、独自のシステムの開発を競い合うことにならないでしょうか。

ES:当初は、標準化をめぐっての主導権争いが起こる可能性はあると思います。こうした争いは他の技術分野でも前例があります。ある国で購入したDVDが、必ずしも別の国で製造されたプレーヤーで再生できるとは限らなかったのです。ある車は米国でしか運転できず、ある車はヨーロッパでしか運転できないという状況が好ましいとは思えません。私は、世界中のメーカーが標準を一つにまとめる方向に向かうと考えています。

「IT基盤が、自動車の付加価値になりつつあります。」

ED SCHLESINGER
ジョンズ ホプキンス大学工学部長

COMPASS誌: では、その課題を解決して、完全自律型車両を実現できるとお考えですか。

ES: はい。個人的には、さらに進化した自律型の後に、完全自律型が実現できると考えています。自律走行車は、まずニッチな用途に進出するでしょう。港では18輪トラックが、空港ではレンタカー送迎バスが自律型になるでしょう。また、ロサンゼルスからサンフランシスコまで専用車線を設け、自律型トラック車両に行程の80%を走行させます。サンフランシスコに近づくと人間のドライバーが運転席に乗り込み、より複雑な経路にトラックを進めるようにするのです。

COMPASS誌: このすべてが、今日の交通システムよりも安全になるのでしょうか。

ES:自律走行車での移動が、飛行機と同様に
安全性が高いことは100%確信しています。誰もが知っているように、飛行機での移動は、統計的に、車での移動よりもはるかに安全です。航空機システムには非常に優れた技術を集結した機体が用いられ、パイロットは高度な訓練、監視、審査を受けています。自律走行車も同様のシステムになるでしょう。疲労や酒気帯び、注意散漫で事故を起こす人間が一人もいなくなり、車両が交通パターンや最適な経路の情報を得られるようになって、渋滞全般が緩和されます。事故件数も大幅に減少し、運転中に激怒することもなくなります。

このシステムが実施された後に、世間では過去を振り返りこう問うでしょう。「16歳になれば誰でも1トンはある車のハンドルを握り、運転し始めることが許されたなんて、考えられますか。」そんなことを認めていたのが、非常識に思えることでしょう。◆

Watch Carnegie Mellon’s driverless car in action: http://www.youtube.com/watch?v=kW5AnrtVor8

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