自動車メーカーやハイテク企業、ドラ イバーたちが至るところで、グロー バル グリッドに接続されたスマー ト カーの潜在的なメリットに色めき立って います。
このような複雑なシステムを実現しようと すると、気が遠くなるようなテクノロジー が必要になり、すべての自動車に組み込ま れたテクノロジーと連携する汎用的なシス テムの構築・維持にも高額な費用がかかるた め、解決手段を探そうとしている科学技術や ネットワークの専門家、国の規制担当者、投 資家たちは一瞬たりとも気が休まりません。
解決を複雑にしているのは、「インテグレー ション・プロセスの考え方が国によって異 なるからです」と語るのは、ボルボ・モニタ リング・アンド・コンセプト・センターの総 括責任者であり、ボルボ・ノースアメリカ 社でXC90 SUVモデルを担当するバイスプ レジデント、Anders Tylman-Mikiewicz氏 です。モビリティ(移動・輸送機器)のイン テグレーションにおいて、どのような変更 が必要なのかを判断するには、ある問題点 や課題が、ある国や業界ではどのように認 識されているのかを把握する必要がありま す。「たとえば欧州には、電気自動車の運転 に関して、米国にはない税法が存在してい ます」(Tylman-Mikiewicz氏)
パイロット プロジェクトに よって認知度をテスト
ボルボ社が本拠を構えるスウェーデンの イェーテボリでは、同社は市当局や国会議 員、通信事業者、運輸当局と連携して100台 の自動運転車を一般市民の手に委ねていま す。この実験の目的は、連携しているそれ ぞれの当事者が、インターネットと統合さ れた車で使えるインフラを構築する際の課 題と、その解決策を見出す事です。たとえ ばインフラの設計者は、モビリティ環境が 混み合ってきた時の適切な車両間隔の管理 など、車にどれだけ多くの知能を搭載でき、 どの機能を持たせるべきかを判断しなけれ ばいけません。
「自動車業界に長くいる ベテランの意思決定者たちは 愛好家コミュニティの反応を とても気にしますが、 それはモビリティ市場では ありません。」
JEAN REDFIELD氏
NextEnergy社、社長兼CEO
Tylman-Mikiewicz氏は次のように語りま す。「こうした点については学術的な議論 はいくらでもできますが、大切なのは車に 乗ってもらうことです。このようなパイ ロット プロジェクトを実施してみて初め て、行動を測定、ものごとを数値化し、それ らをどれだけ素早く強化できるのかを把握 できるのです」。関係者の間でそのテクノロ ジーを実現できるという自信を深める上で は、試してみることが大切で、それによって プロセスが前進すると同氏は説明します。
愛好家 vs. 実用主義
米国デトロイトに本拠を置き、インキュベーターとして高度なエネルギー関連テ クノロジーの実証や商品化の促進を担う NextEnergy社の社長兼CEO、Jean Redfield 氏は次のように語ります。「自動車業界に 長くいるベテランたちは愛好家コミュニ ティの反応をとても気にしますが、それは モビリティ市場ではありません」。愛好家た ちは馬力や操作性、見た目の美しさに興味 を持ちますが、グローバルなスマート カー 管制システムが実現するためには、モビリ ティ・デバイスが対応すべき実用上の問題 のほうがはるかに多いのです。
Nissan Powertrain社でバイスプレジデント を務めるPierre Loing氏は、自動ブレーキシ ステムは現在の新車では当たり前の装備に なりつつあるいっぽう、複数レーンの車線 変更や交差点をナビゲートする複雑さを自 動制御するまでにはまだ長い道のりがある と考えています。Loing氏は「車は面白い乗 り物です。シリコンバレーの研究チームに 聞いてみてください」と語り、自律走行車に 対するグーグル社やアップル社の熱の入れようを引き合いに出します。
ただし、見落とされることが多い課題とし て、「自律走行車は、運転手を全く必要とし ない車のことではない」点がある、とLoing は指摘します。「特定の条件の下でのみ、 車に制御を渡すようにします。すでに開発 している車線維持システムを例に取れば、 ハンドルから手を離せるのは5秒から10秒 程度です。だからこそ、このような難しい 問題、つまり自律制御に焦点を当てている のです」。しかし、自律制御は保護する必要 があるとLoing氏は語ります。それは別の 悩ましい問題、すなわち自動運転のための 管制システム(グリッド)をハッカーから守 らなければならないという問題を引き起こ すのです。「システムを開発する際には安全 対策を盛り込むのが、私どもの仕事です」
投資には見直しが必要
自動運転のグリッド、というコンセプトが直 面する技術的な課題の中でも、おそらく最大 の問題はそれを実現するために必要な調査 費をどのように負担し、その技術が十分に成 長した時にどのように投資を回収するのかと いう点です。
フォード・モーター・カンパニー社の常 勤のグローバル フューチャリスト、Sheryl Connelly氏は資金調達に対する障壁はこれ までになく低くなっていると語ります。「これ までにはなかったキックスターターなどの 資金調達方法や、クラウド ソーシングやエン ジェル インベスターなどの新たなプラット フォームがすべて、素晴らしいアイデアを持 つ人たちを支援できるのです」
銀行やベンチャー投資家といった従来型の 資金の出し手が追求するのは自律走行型自 動車の投資対効果であり、それはこれからも 変わらないだろうとTylman-Mikiewicz氏は 語ります。「車にいったん運転をまかせてし まえば、運転手は他のことができる。これこ そが現時点では実現できていないビジネス の要素です。これによって市場が拡大し、そ うした企業の多くにとって、それこそ大きな 収益につながるのだと思います」