バーチャル トレーニング

楽しみやゲームにとどまらないシミュレーションの活用

Martin Koppe
8 June 2014

専門技術者やエンジニアのトレーニングには、高価でデリケート、ときには危険を伴う恐れがある設備や機器が不可欠です。しかしバーチャル・ラボで効果的なデジタル学習ツールを利用すれば、学生も指導者も物理的な制約を乗り越えて安全にトレーニングができるようになります。

MO O C(M a s s i v e O p e n O n l i n e Courses-大規模公開オンライン授業)、遠隔教育、反転授業などの登場により、インターネットは教育に大変革をもたらしています。これらのオンライン学習手法の効果は既に証明されているとはいえ、実践的な訓練が必要なスキルも依然として存在します。原子力発電所内での作業や石油掘削装置の操作など学習の対象が何であれ、バーチャル・ラボを利用すれば、失敗しても危険がない環境の中で実戦的な経験を積むことができます。

学習者は、3Dシミュレーションで本物の装置の動きを画面上にデジタルで再現した設備や機器を操作するので、実践的な練習を通して理解を深めるフレキシブルな環境が得られます。こうしたアイデアは、20年以上も前から夢見られてきましたが、膨大な計算が必要なプログラムを実行するのに十分な性能を持つコンピュータの登場により実現しました。

フランスのノジャン=シュル=マルヌにあるル イ・アル マン 高 校 で 機 械 工 学 を 教えるFrédéric Xerri氏は次のように述べています。「本物の装置は優れた教育ツールですが、生徒全員が同時に使用するには、その数を乗じた台数を用意しなければなりません。私が教える工業製品設計カリキュラムの実践練習では、ハ イテク機 器 を 使 用しま す。中 に は10,000ユ ー ロ(13,500米 ド ル)か ら15,000ユーロ(20,500米ドル)する機種もあります。これでは、生徒を少人数のグループに分けたとしても、経済的に無理です。バーチャル・ラボのおかげで、生徒たちはコンピュータ上の学習ツールで実物さながらのモデルに対して操作を行い、その後で順番に本物の装置を試すことができます。このようにサイバースペースと実物を組み合わせることで、実際のデモンストレーションに費やしていた時間を最大限に活用でき、より多くの教育エクスペリエンスを実現できます。」仮想世界では間違えても重大な結果がもたらされることがないため、学習者はデリケートな実物を操作する心構えができます。

ロボット工学での利用

バーチャル エンジニアリングを専門分野の一つとして設けているアトランタのジョージア工科大学は、高校生向けに夏期ワークショップを開催しています。そこでは十代の若者たちが、プログラミングとロボット工学の入門キットとして人気のLEGO Mindstorms NXT2を使用し、実践トレーニングをバーチャルに行うために役立てています

「本物の装置は優れた教育ツールですが、生徒全員が同時に使用するには、その数を乗じた台数を用意しなければなりません。」

FRÉDÉRIC XERRI
ルイ・アルマン高校(フランス)機械工学教師

「生徒たちは障害物コースを通り抜ける能力を持つロボットを製作しなければなりませんが、LEGOだけでは作れません。自分たちで足りないパーツを設計する必要があります」と指導を担当する研究技術者のSrujal Patel氏は 説 明します。生 徒 たち は す べ てをコンピュータでテストし、バーチャル試験で確証を得るまで3Dプリンタでロボットを出力しません。

生徒たちが異なる場所にいても、共通のデジタル モデルを共有して同時に作業できます。同じコンピュータ上で作業する必要がなくモデルの微調整ができ、製作の前に最適化されたロボットが出来上がります。

利点とチームでの取り組み

教師たちの熱意のおかげで、こうした学習方法が成功を収めることに疑いの余地はありません。「特にデジタル世代の学生たちは、すべてを仮想の世界で済ませたがります。幸いなことに教師が必ず生徒の作業をチェックし、具体的な評価を伝える必要があります。思い描いていたものが実際に動くのを見たときの達成感は何にも代えがたいモノです」とXerri氏は述べています。この種の学習法におけるもう一つの利点は、実機の取り扱いミスや損傷を防ぎ、不注意な学生が原因で起こる事故の可能性を排除できることです。

教育用実習機器メーカーは、こうしたデジタル分野への進出を好ましい傾向と考えています。カナダ・オンタリオ州を本拠とし、ジャイロ装置、ヘリコプター、メカニカル アーム、振り子などの教育用機器を扱う大手メーカーQuanser社で教育事業を統括するTom Lee博士は、次のように述べています。「我々は品質の高い機器を提供しており、投資利益率に関心を払っています。学生1人にかかるコストを削減するために、CADスペシャリストと提携し、我々のツールと彼らの仮想ツールの両方を提供しています。こうすることで、手の出せなかった市場への参入が可能になっています。」

バーチャル トレーニングの先駆的企業が切り開きつつある道は、今後多くの教育者たちが続くことになるでしょう。特に教育を十分に受けられない国やまったく受けられない国では、バーチャル トレーニングによって、切望されている知識および学ぶ機会への扉が開かれる可能性があります。◆

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